さようならのつづきを
12月13日はデートだった
相手は憧れの女性で
初恋の人で
自分自身より僕を知ってくれているような
そんな間柄の人と一緒だった
彼女から東北に来ている、と聞いた僕は
"どうやって観光するの?"そう返すところを
"車出そうか?"と聞き返してしまった。
断られるだろうという予想に反して
「9時に駅ね」という約束を交わし
レンタカーを借りた。
待ち合わせの駅前ではシェアリングが空いてなかったため、
ローカル線で一駅先に先回りして
青い車を借りた。
車の中では2人ともあまり会話せず
僕はハンドルを握る手が震え
話せば声も震え
天使と悪魔が両耳に囁き続けてた。
抑えられない鼓動は正直で
体感では5km/hくらいスピード違反だった。
手を握れもしないくせに
強がって"着いてこい"
なんて、言えたら良いのに。
言えないよ、近すぎて。
海へ行った。
永遠に続くような掟に飽きたのかもしれない。
置いてきた何かを見に行きたかったのかも。
ただ彼女のリクエストだったから。
あの時あの場所で
さよならから始まることもあるんだと
言い聞かせていたのに
どうしようもなく君が好きで
君が好きでたまらなかった。
"好きだ"と言ったら
「わたしもだよ、もちろん」と彼女は笑い
「でも愛せない」と海を見て言った。
それからは他愛もない話をして
海鮮丼を食べて
日本酒を買って
駅まで送った。
もちろん、次の約束をして。
さようならは、もう少し続くらしい。